[魚拓] 肩をすくめるアトラス

肩をすくめるアトラス 第三部 (AはAである)

「なぜインターネットやソフトウェアではアメリカからばかり発生確率が0.1%のような傑出したイノベーションが生まれるのだろうか?」という問いを持っていた。

本ブログでも繰り返し取り上げていたが、新卒時代から長年疑問に思っていたことで、会社では上司にいいからタスク達成しろと怒られたり、社会人大学院で研究テーマにしようとして教授からもっと問いを小さくしろと指導されたりしながら、なにかの折にふれ断片を集め、それでもまだしっくりとこないところがありつつも、少しずつ理解を深めてきたのだが、ビットコイン文脈から存在を知った本書「肩をすくめるアトラス」を読んでようやく一通りの解に辿り着いた気分になった。それは本書でも記述されている「自由の国として建国されたから」といった再現性もなく定性的な上にこの国の歴史や風土に根ざした価値観にNOを突きつけるどうしようもない話になるのでここでは触れずに(修士論文のテーマにしなくてよかったです!)、電子版がなく紙の本だけだったため読みながらスマホで記録していた引用箇所を、魚拓しておく。

第一部 矛盾律


P10 だが人が正しいことをしなければならないのは当たりまえだとはいまも考えている。どうしてそうしたくない人びとがいるのか理解できないが、そういう人間がいることだけはわかるようになった。
P78「誰かの犠牲をおそれる人間には共通の目的について語る資格はない」
P88 入手可能な事実はほとんどなく、ダンコニアが公開した情報は具体性を欠いていた。かれらはメキシコ人民の貧困と、かれらが切実に鉄道を必要としていることを長々と語った。
P97 他人が自分を阻止する権利を彼は認めようとはしなかった。政府からはいかなる借入金も、債権も、補助金も、土地の払い下げも、有利な立法措置も求めなかった。公共の利益は何があっても口にしなかった。
P110 彼の人生は、本人に報酬が意味をもつ時から一世紀あとに公園の像となるのが報酬だったすべての男たちの人生の要約だった。
P127 自己犠牲を正当化するものなんてない。他人を生贄にする権利は誰にもない。最高の能力を破壊することが道徳的なわけがない。
P142 喜びが存在の目的と本質ならば、喜びの源泉が人のもっとも奥深い秘密として常にかたく守られるものならば、たったいま互いを裸で見たのだ。
P184 正しいことなのに、なんて難しいんだ!難しすぎる!
P195 放蕩者は精神の純粋な安らぎにたどりつけない。
P206 情熱的な愛の対象である信仰に身を捧げた自分は、そのために人からつまはじきにされ、同情を得られないのは当然と思っていた。
P236 人は行動が正直であれば、あらかじめ他人から信頼を得る必要はなく、合理的な知覚が必要なだけです。そういう道徳的な白地小切手を欲しがる人間には、本人が認めようが認めまいが不正直な意図がある。
P243 自分がとてつもなく重要と感じるときだけ、人は心から軽い気持ちになれるんじゃないかしら。
P263 彼はいまだに呑気な学生気分の抜けきらない四十代の男だ。
P288 道徳ってなにかしら?善悪を見分ける判断、真実を見る目、それに基づいて行動する勇気、良いものへの献身、いかなる代償を払ってでも善きものの側に立ち続ける決意。
P310 何か成し遂げたければ、我々にそうさせておくようにかれらを惑わすか、あるいはそれを強制しなければならない。
P350 おまえを呼ばず、意見を求めず、話もさせなかった。
P385 他人が人生に何を求めているかは知らないが、この感情への権利こそ、二人が見つけたいと願ったすべてだった。
P391 それは人生で最高の興奮、信じるのではなく、知ることだ。
P391 誰の悪意が世にはびこり、その2つをひき離して対立させたのだろう?
P397 何の力が目に見えない分子の配合に、わたしたちの命と八十台の貨物を持つすべての人たちの生活がかかる力を与えたのか?
P398 モーターのあらゆる部分は「なぜ?」「何のために?」という問いに対する答えを具現化したものだ。モーターは鋼鉄で鋳造された道徳律なのだ。
P399 なぜならそれがすべてを動かす力、思考と選択と目的の力だから。
P408 存在への愛のために。存在の承認がほかに要らないほど、強烈な歓喜の頂点にまで。
P424 何かになる。どこかに到達するってことです。
P490 思考を定めず、動機を明かさず、目的に言及せず、道徳を明示しない者たちに対してとりうる行動はない。言えることなどない。
P497 本当の献身は、誰かを幸せにするために喜んで嘘をつき、騙し、偽ることだと私が答えたら、相手が好きになれない現実を、その人が望むように作り変えることだって。それこそが愛の本当の証なの。なぜってあなたは、自分の良心と、理性と、誠実さと、かけがえのない自尊心を犠牲にするんですもの。
P500 妻の意地悪、皮肉、微笑で固めた卑劣な侮辱のしかたは、常々の解釈と反対のものではなかっただろうかと、彼は初めて思った。

第二部 二者択一


P9 先の見えないこの時代に、おのれの信念といった想像上の概念のために既存の社会秩序に反することによって、あえて危険を冒してわざわざ災難を招くというのだろうか?
P18 それが人気を得る道です。
P37 あなたは二流の人物の烙印をご存知かな?
P61 俺が若かったとき、ミネソタの鉱山で働いていたとき、俺はこんな夜に到達したいと思っていた。
P81 彼の人生の質問すべてに答えられる気がした。
P94 だけど、あなたの長所をみてあなたを傷つけようとする人びとがいる。
P126 その紙切れは本来金であるべきだが、ある名誉の象徴‐生産する人間の活力を求める権利なのです。あなたの財布は、世界のどこかにお金の根源たる道徳律をおかさない人間がいるという希望の証だ。富は人の考える能力の産物です。人は損失ではなく利益のために働く。人間の絆は苦悩の交換ではなく良いもの(goods)の交換だという認識です。おのれの弱みを売ることではなく、理性に訴えて才能を売ること。
P129 勇気も誇りも自身もない人間、自分のお金への権利について道徳観念がなく、命を守るようにそれを守る覚悟のない人間、裕福であることに恐縮する人間は、いつまでも豊かでいつづけることはできません。
P132 正真正銘の富の製造者であり、最高の労働者であり、もっとも高遇な種類の人間‐独立独行の男‐アメリカの実業家が出現したのです。
P132 血、鞭、銃をとるか-ドルをとるか。
P138 考えたほうがよいとわかっている思考を避けつづけています。あなた自身の欲望を無視してはいけません。
P151 一方が利益をえてもう一方が損をする取引は詐欺よ。
P195 その卓越した価値をあなたが認識し、認識にともなう力をもっておられたからだ。
P199 たとえ1セントであっても他人の努力に対して自分の権利を主張する人間のことです。
P200 欠点によってではなく、最高の美徳のために、あなたは常に非難されてきた。
P217 彼女は不名誉の苦しみを味あわせたがっている。
P220 かれらの意地悪の真意は、なにか粗野で子供っぽい臆病な理由によって、彼を守り、妥協させ、安全なところまで引きずり落とすことにあるのかもしれない。
P243 私が顧客に得をさせるために損失を覚悟で生産することはないし、顧客が私に儲けさせようと損をしてまで購入することもない。
P259 自分の欲望を殺して慈善精神でその行為に及ぶことを考えてもごらんなさい!
P261 彼は考えも及ばないものについての定義できない感情が人生の意味であり、おのれの美徳の証明だと考える。そして尊敬する女性に何も感じられないのに、卑しい場所の売春婦へのあらがぬ情熱にとりこになっていることに気がついて絶望の悲鳴をあげる。
P371 今こそ目を凝らせ。
P375 苦痛からの逃亡が唯一努力の動機となり業績の報酬とされた社会で、愛と能力と喜びを脅しへの飼葉ともゆすりの餌ともされ、愛によって恐怖にさらされ、能力によって罰をうけ、野心によって没収にあい、おのれの生命力と人生に見出した喜びのために隷属させられた人びとがいる。
P378 征服しえなかった恥ずべき欲望が、これまでに見いだした唯一の美の光景への反応として、ありうべからざる激しさをもって彼を襲い、彼に残された自由はそれを隠しておのれを軽蔑することだけであり、その欲望は彼とこの女性が生きている限り逃れられないものだということだった。
P380 人は精神において価値のあるものを行動に移されず実現されない無能な願望にとどめておかねばならない
P390 メタルへの権利を所有して堂々とそれを売る唯一の人間でありたいという願望は、仲間である人間への尊厳とかれらとの取引が名誉な行為だという信条の形だった。
P403 死と税金ではなく、命と生産を二つの絶対的なもの、道徳律の基盤とみなすようになるかもしれません。
P449 料理という作業は閉ざされた円のようであり、完成されては消えて、どこにも続かない。だが道を築く作業は結果が積み上げられていき、どの一日も過去に消えることはなく、毎日がそれ以前のすべての日々を含み、毎日がそれに続くすべての明日において不滅になった。
P466 きみはやつらを理解することを学ばなければならない。その日まできみはやつらから自由になれない。
P500 ほとんど微笑に近い表情であり、彼女はフランシスコ・ダンコニアの最大の偉業を目撃していた。
P506 はかりしれない利益をかれらにもたらすために、僕たちがいなければそんなことを考えもつかない者たちのための殉教者にさせられることは。
P541 やつはわしらにまじってぶらぶらしては時間をつぶし、自分がどれほど気さくで民主的かというのを見せてまわったのです。愛されたかったらしい。
P582 彼女の命はいまや彼女自身の手中にあり、議論し、説明し、教え、懇願し、戦う必要はない-見て考えて行動することのほかには何の必要もないという発見だった。

第三部 AはAである


P47 僕にとって、犯罪者よりも見下げ果てたこの世でもっとも卑劣な人間は、優秀すぎるからといって人を拒絶する雇い主だ。
P54 凡庸の大海に沈む重しをつけられたダイバーのように、人間の頭脳の卓越した偉業への思いを生命線と酸素の管として保ち続けてきたとすれば
P55 思考の接続によってワイヤを接続する方法を見いだした一つの頭脳のエネルギーによっておきかえられ支払われた負担、労力、時間のエネルギーのすべては、そうした別のことに費やされる。
P56 己の人生とその愛によって私は誓う。私は決して他人のために生きることはなく、他人は私のために生きることを求めない
P62 我々は語るのではなく示すのです。主張するのではなく証明する。
P62 天国の夢と素晴らしさを墓の中までお預けにするべきか-あるいはそれがここで、いまこの世で我々のものとなるべきなのか、自分にたずねてごらんなさい。
P63 彼に言われて、俺は自分が生涯聞きたくて聞けなかったことが何だったのかわかった。きみはかれらにきみを見て、「よくやった」と言ってほしいんだ。
P64 これがマリガンの富の概念だ、と彼女はおもった。蓄積ではなく、選択の富だ。
P66 人類のもっとも陰惨な悪、人間が考案したうちもっとも破壊的な恐るべき仕組みは客観的ではない法律だと証明するつもりです。
P67 頭脳は悪とみなされ、活発な意識をもつ目を通して世界を見て理性的に関連づけていくというきわめて重要な行為をおこなう責任を引き受けた者たちに対しては、異端者から唯物主義者から搾取者までのあらゆる侮辱の形が与えられてきました。
P72 基本的前提はアンチテーゼとの協同を許さず、寛容さを認めない絶対的なものだ。
P81 人間は確かに社会的な生きものだが、たかり屋が教えるありかたにおいてじゃない。
P82 人が同意するのは難しいと言われている。だが双方が、どちらも他方のために存在するのではなく、理性が取引の唯一の手段であることを道徳律としていれば、それは実に容易なことだ。
P123 何よりも激しく忌み嫌ってきた人間の宿命観、すなわち人間は常に到達不可能な輝かしい展望に引きずられ、常に志を抱くものの達成することはないという見方だ。不可能なものへの憧れを美しいと思ったことも、可能なものに手がかないと思ったこともない。
P133 あなたは富と豪奢さと人生の楽しみをその正当な持ち主、すなわち鉄道と工場を創造した男たちに返すように見えた。あなたの容は活力とその報酬の両方、つまり有能さと贅沢さがあらわれていた。
P136 そうした偽の現実によって、たいていの人間は自分を欺いたまま人生を無駄にしてしまう。私にはできない。
P139 人の心ではなく、頭によって称賛されたいのです。
P140 交響曲にせよ炭坑にせよ、すべて仕事は創造する行為であり、同じ根源から来ています。つまり自分自身の目でみるという神聖な能力-すなわち、合理的認識をおこなう能力-すなわち、かつて見えておらず、関連づけられておらず、創られていなかったものを見て、関連づけて、創る能力です。
P141 この精神と勇気と真実への愛の子なんです。「本質」や「意義」などといった粗野な概念には抑圧されておらず、作品をどうやって作ったのかも知らず、あえて考えるほど堕落することもなく、ただそう感じるのであり、 だが知らないまま、あまりにも長く知ることを遅らせてしまったのは、自分の感情を説明できないと主張する者たちの本質でした。
P142 誰よりも罪深いのは、いまや真っ先に抹殺されるのは自分であり、唯一の擁護者の破壊に加担することで自分を抹殺する者の勝利を手伝っていたと知ることになる真の芸術家たちです。
P143 彼女自身の子どもの頃の感覚は、パン屋の若い女主人の二人の息子たちに出会うたびに戻ってきた。七歳と四歳の怖いもの知らずのふたりが谷の小道を歩き回っているようにみえた。外の世界の子どもたちによく見た表情-秘密めいた皮肉交じりの怯えた表情や、大人に反抗する子どもの防御的な表情や、嘘を聞かされていると知って憎しみを覚えつつある表情はない。この二人の少年には、傷つけられていると思いもしない子猫のような開けっぴろげで楽しげな人なつっこい信頼、自分の価値についての無邪気で自然な驕慢さのない感覚と、他人がその価値を認識する能力への同じく無邪気な信頼があった。かれらには、人生には価値のないものも、発見の道が閉ざされているものもないという確信をもってどこへでも踏み込んでいく旺盛な好奇心があった。そして、たとえ悪意のあるものに出くわしたとしても、それを危険ではなく愚かなものとして見下して拒み、それが存在の法則だと傷つきあきらめて受け入れることなどないかに思えた。
P146 彼らには二つの専攻がありました。物理学と哲学です。その選択は私以外の全員を驚かせました。現代の思想家は現実の知覚を不要と考え、現代の物理学者は思想を不要と考えていたからです。
P148 彼らは将来やれればと思っていることについて話したことがありませんでした。彼らは自分たちがやることについて話したのです。
P150 ロバート・スタッドラーの致命的な過ちは、自分にふさわしい居場所を見いだせなかったことでした。あえて彼に反対しようとする愚鈍さへの刺々しく、苦々しく、疲れきった憎悪です。そのための手段や、自分の道や、敵の本質を見きわめようとはしませんでした。近道を選んだのです。
P150 ジョンは発明家を志しており、それはすなわち物理学者になるということでした。
P153 人はみな自分自身に似せて自分の世界を築いていきます。
P153 彼らは一切譲歩しなかった。これは彼らが守ったものと彼らという人間の物差しです。
P163 自己犠牲の規範を三人が用いていれば何を意味したかという正確な図を彼女は頭に思い描いていた。
P163 だがこれが外の世界の人間の道徳律なのだ、と彼女はおもった。互いの弱さと偽りと愚かさを前提として行動せよと教える規範。これがかれらの生活パターンなのだ。
P164 もし人が、非合理的なものを可能なものの視野におかず、破壊を実用的なものの視野におかなくなったとすれば、事業においても、貿易においても、もっとも個人的な欲望においても人と人との間には利益の衝突などなくなると。現実が偽るべからざる絶対であり、嘘が役に立たず、稼いでもいないものを得ることはできず、値しないものを与えることはできず、実存する価値の破壊は実存しない価値をもたらさないと人が理解すれば−衝突も犠牲の要求もなく、人は誰も他人の目的の脅威にはなりはしない。
P165 自分以外の誰の幸福についても、私が成就させたり破壊したりする力はありません。
P171 我々が正しいと我々に確信させている理由をすべて考慮しなさい。だが我々が確信しているという事実は考慮しなくていい。
P172 きみは自分自身以外の誰にも義務を負わないのだから。
P181 永遠に救われることがないのは情熱のない人間だけだから。
P189 それを知るとき、あなたの戦いの年月を通じてあなたをアトランティスから遠ざけていたものは何もなく、自らまとう鎖のほかにあなたを縛る鎖はなかったと気づくでしょう。
P219 言葉が何の特別な意味も伝えないように選ばれているのは明らかだった。
P245 それがとても大勢の頑固な反対者を意気消沈させて抑えておくのに役立ったのです。
P261 物質の征服に忙しくしているあいだ、僕はやつらに精神と思考と原則と法律と価値観と道徳の世界を譲り渡してしまっていた。
P264 社会に嘘をつけばそのときから社会の奴隷になる。きみへの愛を隠し、世間にはそれを否認して、嘘としてその愛に生きると決めたとき、僕はそれを公有財産にしたのであり−世間はそれに見合ったやりかたでそれを請求したんだ。
P264 だが潔白の嘘など存在せず、凶悪な破壊があるだけで、しかも潔白の嘘は何にもまして凶悪だった。
P264 僕は真実を見て、幸せだ
P264 かりに僕が苦痛に屈して自分自身の過失が自分の過去を台無しにしたと虚しい後悔をしてあきらめたとすれば、それは究極の裏切り行為、無念にもあきらかにできなかった真実との決定的な断絶だ。だが本物の愛が唯一の所有物として残るなら、失くしたものが大きいほど、その愛のために払った代償についての誇りも大きくなる。
P265 いま僕には自分に欠けていた最高の価値について知っている。自分のビジョンを誇る権利だ。ほかはこれから手に入れればいい。
P289 正直な人びとは信頼されるかどうかという問題で短気を起こしたりはしないと知っていたからだ。
P292 きみは鉄道の経営は線路工事と高級金属と時間通りに列車を走らせるという問題だと思っている。たがそうじゃない。どんな下っ端にだってそんなことはできる。鉄道の本当の中心はワシントンにある。僕の仕事は政治だ。決断は国家規模で下され、すべてに影響し、すべての人間を統制する。紙切れに書いた数語、一つの政令が、この国の隅々の一人一人の生活を変えるんだ。
P299 おのれの苦しみだけが自分の価値であり、彼女の人生と引き換えに提供できるものである男だけだ。
P310 人が「情がない」といって誰かを非難するときは必ずといっていいほど、その人物は正しいという意味なのです。「感じる」ことは理由や倫理や現実に逆らうという意味なのです。
P311 あの人たちが存在する限り、わたしが生きるチャンスはない気がして...チャンスも、余地も、やっていける世界も...逃げ場がない →自分自身の精神の判決の上には何もおかない
P334 僕はきみを欠点のために、過ちや弱みのために、無知や粗野さや野蛮さのために喜んで愛そうとしたんだ。それは安全だからな。
P354 自分の考えをあらわすくらいなら死んだほうがましだという男、生涯思想の存在から逃げ、犯罪者の便宜主義によって行動してきた男の悲鳴だった。
P355 自分の啓示を道理として、本能を科学として、渇望を知識として喧伝してきた書斎と教室の詐欺師の目標がある。
P381 やつらは苦痛を崇める人間だ。
P406 産業生産の価値を疑う者などいないだろうと彼女は考えていた。
P416 明らかに自分の力の外にあるにもかかわらず、自分の願望によって達成されると確信していることを成し遂げる意志の緊張だ。いや、願望ではなく、その完全な正しさによって。
P423 私はこれまでしたことがないこと、ほとんどの男たちがそうして一生をふいにしてしまうことをした。
P423 苦しみは戦って追放すべきものであって、人の塊の一部として、存在の観念を覆う永久的な傷として受け入れるべきものではないと知っているということなんだ。
P437 緊張、当惑、打ち明けられない不幸の陰鬱な重み、その告白を許さなかった厳しい忍耐、ひたむきに家族を理解しようと...正しくあろうとした努力。
P442 一年前なら、これが彼女の償いかただと彼は自分に言い聞かせたことだろう。自分にはつかみどころのない無意味さしか伝えない彼女の言葉への嫌悪感を押し殺し、理解していない言葉に意味を与えようと自分の精神を侵し、自分とは違うとしても彼女なりの条件に基づいた誠実さの美徳があると考えていたことだろう。だが自分自身のものではない条件に敬意をはらうのはもう真っ平だった。
P444 いまではかれらを傷つけたくないという、かれらの痛みを恐れる彼の気持ちによってのみ、自分が引き止められていたと知っている。彼はもうそれを恐れてはいなかった。
P449 一人の人間を選び、おのれの人生の視野の焦点として、常に関心の中心においておくことが愛することだとすれば‐彼はおもった‐彼女は確かに彼を愛していた。だが、彼にとっては愛が自分自身と存在を祝うことだとすれば、自己を嫌悪し、人生を憎む者にとっては、破壊の追求がたった一つの愛のかたちであり、その同等物なのだ。
P450 罪の毒によって粉砕したがったのは自信に満ちた清廉さだった。
P467 あなたはそのように条件付けられているのです。
P468 我々は滅びると言い続けてきました。しかし結局のところ、我々は健在じゃないですか。
P470 やるべきことはただ望むこと、可能かどうかに関わらず願うことだけ
P471 では誰が滅びたのだろう?かれらの生存方法の代償として滅びたのは誰だったのだろう?
P478 今夜、それがどういうことか、本当に生きていることがどういうことかわかったから...もっと早くわかっていればよかったと思うことがものすごくたくさん...
P482 自分に託された若い精神を無力にすることに快感を覚えた大学の教室の穏やかで一見無害な暗殺者に。
P483 きみに何がわかるというんだね?社会が一番よくわかっているんだ!
P483 母鳥が子の羽をもいでから戦って生きのびよと巣から押し出すのを見たならば、人はぞっとすることだろう。だがそれが、人が子どもたちにしたことだった。
P506 こちらジョン・ゴールト。私は自分の命を愛する人間だ。自分の愛や価値観を犠牲にしない人間だ。
P508 我々のストライキは要求することではなく、それを認めることからなっている。
P509 諸君は神秘主義的あるいは社会的な道徳観念しか耳にしたことがなかった。
P510 人間の知性は基本的な生存手段だ。命は与えられるものだが生存は違う。
P511 「価値」は、誰にとっての何のための価値か、という問いへの答えを前提とする。
P512 人は生存のための行動規範を生まれながらに知っているわけではない。ほかの生物と特に異なっているのは、自分の意志によってさまざまな選択を続けていく必要があることだ。
P512 願望は本能ではない。
P514 道徳の目的は人に苦難と死を教えることではなく、楽しんで生きることを教えることだ。
P516 存在とは独自性であり、意識するとは独自性を認識することである。
P517 矛盾を主張することは人の頭脳を放棄し、現実の領域からおのれを追い立てることである。
P518 真実は現実の認識である。
P520 自立とは、判断することは自分の責任であり、なにものも判断の回避を助けることはなく、自己をおとしめ、破壊する最悪の形は自分の頭脳より上のものとして権威を受け入れ、その主張を事実として、断定を真実として、命令を自分の意識と存在の仲介者として受け入れることだ、という事実の認識である。
P521 正義とは、人は自然の性質をいつわることができないように人間の性質をいつわることはできず、人はすべての人間を、無生物を判断するときと同じ真実への敬意と高潔な視野をもって、同じく理論的かつ合理的な認識の過程によって良心的に判断しなければならず
P522 自分の知力のすべてが要求されない仕事に落ち着くことは、自分のモーターを止め、自分自身に退廃という別の動作を宣告することであり
P523 他人を目標にする人間はどんな運転手も拾ってはならないヒッチハイカーであり
P523 おのれに開かれたいかなる業績のなかでも、ほかのすべてを可能にするのは自分自身の人格の創造であり
P523 人生を維持する価値のあるものにする人格の価値を獲得しなければならず
P523 自尊心の第一の前提条件は、すべてのもののなかから物質と精神の価値において最高のものを望む魂
P531 人間は自由意志をもって生まれてくるが悪にかたむく「性向」があるなどという臆病な逃げ口上の後ろに隠れないことだ。
P536 犠牲は、犠牲にする価値観も基準も判断力も何もない人びと‐なんとなく思いついて簡単にあきらめられる、わけのわからない気まぐれな願望しかない人びとにとってのみ適切でありうる。
P538 最大多数の最大幸福という基準に身売りしている。
P546 かれらはそれでないものが何かを語り続けるが、それが何であるかを言ったことがない。
P555 それが思想家および科学者として彼が誕生する日なのだ。
P559 経済学の目的を「人間の無限の欲望と限りある物資の供給とのあいだの調整」と定める。
P561 超自然的な存在への信仰は他人への優越への信仰としてはじまる。
P561 すべて独裁者は神秘家であり、すべて神秘家は独裁者になる可能性を秘めている。
P563 自分自身を神秘家の独裁にあわせ、その命令に従うことで彼を満足させることができると信じるまでに堕落した諸君よ‐神秘家を満足させる方法などない。
P564 世界をむさぼり食らうことで魂の私心なき無を満たそうとする反生命のかれらこそが悪の真髄なのだ
P566 これまでの生涯にいくつの独自の結論に達したか、どれほどの時間が他人から学んだ行為をおこなうことに費やされているかを自分にたずねてみることだ。
P567 諸君は我々なしでは生きられないと公言しながら、我々の生存条件を規定するという。
P568 諸君は非営利を主張するあらゆる事業を賞賛し、利益を生んでその事業を可能にした者たちを非難する。
P569 ジョン・ゴールトの正体を知りたいというのか?私は初めて能力を罪悪視することを拒否した能力のある人間である。
P570 いまだ見つからない理想への憧れのために無防備になり、おのれの能力のほんの少しだけで機能する人間‐かれらはストライキをしている
P570 それが戦いだという認識もなく正義感にあふれ、強烈な願望であるという認識もなく情熱にみちた絶望的な憤懣の闇の中で、かれらは現実の力を諸君にゆずり、知的意欲を捨てる。
P573 諸君は賞賛する人間を憐れみ、かれらが失敗する運命にあると信じている。そして憎んでいる人間をうらやみ、かれらが処世の達人だと思いこんでいる。
P574 そこから逃れようとして諸君がまたがっている柵は、「だが極端に走る必要はない」という一文に凝縮された臆病者の公式だ。
P574 いかなる原則についても言葉を濁し、いかなる価値についても妥協し、いかなるときにも中道を歩むことを教えてきた。
P575 同意も反対もせず、絶対的なものなどないと言いきって判断をくだそうとせず、自分には責任がないと思いこんでいる人間は、世界でいま流されている血のすべてに責任のある人間だ。現実は絶対であり、存在は絶対であり、一片の埃は絶対であり、人の命もまたしかり。
P575 すべてのことがらには二つの側面がある。一方は正しく、もう一方は誤りだが、中間は常に悪である。
P576 中途半端に合理的で臆病な諸君は、現実の信用詐欺を働いてきたが、諸君があざむいた犠牲者は諸君自身だ。
P576 自分が正しいと確信することは利己的だとかれらが叫べば、あわてて自分には何も確信できないと請け負う。
P576 諸君は自分の地域のために生きることは利己的だが、自分の国のために生きることは道徳にかなうと譲歩した。
P579 彼には自尊心の必要について選択の余地はなく、唯一選択できるのはそれを測る基準である。
P579 理由なき自信の喪失、秘められた劣等感はすべて、じつは、存在に対処するおのれの無能さについてのひそかな恐れである。
P580 問題に直面することを恐れることは、現実はなによりもひどいと信じていることだ。
P580 魂を恒久的な罪悪感で汚染させるのは諸君が犯した罪ではなく、失敗や過失や弱点でもなく、そうしたものから逃れようとした抹消行為であり、それはなにかの原罪でもなく、思考を停止しているという諸君の怠慢についての意識と事実なのだ。
P580 自尊心はおのれの思考力への信頼なのだ。
P580 幼少時代のはじめ、輝かしい存在の状態と、開放された宇宙に向き合う合理的な意識の独立性を知っていたという感覚をとどめている。
P582 知識の誤りと道徳違反の違いを見分けることをおぼえなさい。
P583 美徳と称して謙遜という悪徳のぼろをまとうことをやめて、自分の価値を認め、自分の幸福のために戦うことだ。あらゆる美徳は自尊心に集約されると知るとき、人間らしく生きるとはどういうことかがわかるだろう。
P584 苦しんでいる人間を助けるときには、その人物の美徳、再生する権利、経歴の合理性、不正に苦しんでいるという事実だけを理由に助けることにしなさい。
P585 理性の落とし子たるこの国は、犠牲の道徳によって永らえることはできない。建国者たちは自己犠牲や施しを求めはしなかった。
P586 人間の権利は神の法律でも議会の法律でもなく、同一原理に由来する。AはAであり、人間は人間なのだ。
P587 そのほかのことは犠牲者の寛容さに応じて与えられた時間の問題だ。
P587 「人権」か「財産権」かのいんちきな選択肢を、一方が他方なしに存在しうるかのように。「人権」が「財産権」に優先するという教義は、ある人間は他人を餌にして財をなす権利があると言っているにすぎない。
P588 人は強制によって知力を働かせることはできない。考えることができる者は強制によって働こうとはしない。強制によって働く者ならば、かれらを隷属させるのに必要な鞭の値段以上のものを生産することはない。
P588 唯一適切な政府の目的は人権の保護、すなわち人民を暴力から守ることだけだ。
P591 合理的な努力のどんな分野においてもアイデアを生み出す人間‐新しい知識を発見する人間は、人類の永遠の恩人である。
P591 新製品を創り出した人間がどれほどの財産を築き、何百万を稼ごうが、彼がそそいだ知的な労力に比べると、実際に受け取る報酬の額は生みだした価値のごく一部でしかない。
P593 経済と政治の力、金の力と銃の力の違い
P594 世界の悪行は諸君が承認を与えてはじめて可能になる。その承認をとりさげなさい。支持をやめなさい。敵の条件下で生きようとしたり、かれらが規則を定める勝負に勝とうとしたりしないことだ。諸君を奴隷にした者たちの厚意を求めてはならない。
P594 求めたり達成したりする価値が高くなるほど、諸君は傷つきやすく無力になっていく。
P595 諸君の道徳律を受け入れ、人間らしく生きるために労苦を惜しまない者たちと実りある生活を築くことだ。
P595 合理的な存在として行動し、誠実な声に飢えている者たちすべての集合点となることを目指しなさい。
P596 自然をおそれる子どもはおらず、なくなるのは人間に対する恐れ、魂の成長をはばんでいた恐れである。
P598 とるべき道と戦いの本質を確認することだ。
P634 敵の本性を君はまだ見ていない。
P638 人は生涯のうち一度か二度、例外的に、自分の人生についてこんなふうに感じるものだ。だが私は‐これを不変であたりまえの姿として選んだ。
P642 精神に強要してはならない、という言葉が現実になった有様だった。
P680 われわれの武器は救いようがなく、ばかばかしいほど子どもっぽい。真実、知識、道理、価値、権利!
P682 人は君のやりかたで存在することはできない!
P747 単なる暴力が頭脳と武力を敵にまわしたらどうなるか思い知るはずだ。
P750 たいていの人間が理解したことのないビジネスマンの言語、「代価は問わず」という言葉だった。
P762 そこには解放の自由と目的の緊張がある。それは空間を一掃し、さえぎられない努力の喜びだけを残していく。
P763 なぜなら公理と呼ばれるこれらの真実は、ほかとは別のある特別な部類にでなく、存在するすべてにあてはまるからである。
P763 国会は生産と貿易の自由を縮小する法律を作ってはならない。
P764 彼女は高い貨物料金をふっかけて身ぐるみはがそうとするだろうが‐支払えるだろう
P764 彼は枯れた大地の上に手を上げて、宙にドルマークを描いた。

本作品のテーマは、著者アイン・ランドによれば「人間の存在に果たす頭脳の役割」だという。