自立するために役立つ本

ブログのタイトルを「悠々自適」と名付けていることに特に深い理由は無いんだけど(ネトゲでギルマスしていた時のギルド名の一つだったくらい)、この4文字熟語への思い入れはともかく、「自由」というものへの欲求は人並みならぬものを持っているという自覚はある。

 

自由にもいろいろあるが、私が強いのは精神的自由になる。経済的自由については、中庸だなあというところ。精神的自由をもち自立していたいという欲求である。何にも縛られたくないし、自分自身のやることは自分自身で決めたい。押しつけられたものではなく自分で選んでるとしても、パッケージされたステレオタイプの像から選ぶのではモヤモヤして違和感を持ってきた。他人の評判ではなくできるだけ自分の目で見て触った感触で判断したい。考えや価値観は人それぞれである。世の中は多様で唯一解なんて存在しない。精神的自由がどういうものかこの後述べるが、それがあなたにとっても良いというわけでもないだろう。

 

なお、ここから自由と自立をほぼ同義扱いして区別せずに用いていく。「精神的」という修飾句が付くなら、両者の概念はおおよそ同じになると考えていて、前後の文章の収まり具合で雑に使い分けている。

 

自由にしろ自立にしろ、それにどうして強い欲求を持つようになったのかはわからない。 DNAなのかもしれないし、親が支配的だったからこその振り子なのかもしれないし、成長期に摂取したコンテンツの影響なのかもしれない。原因ははっきりわからないがここまでどんな過程を経てきたかははっきりしている。長年対外的態度としては、実はこういう内面的欲求とは正反対で、むしろ人の気持ちや組織の目標に献身的過ぎて、ちょうどよいバランスが取れないタイプだった。時間をかけて少しずつ学び試しながらやってきた。そのために、こういったことに引っかからなかった人より、だいぶ自覚的というか、いろいろ詳しい。(なんでもそうだと思っているが、初めから得意だった分野より、苦手だったが克服した分野の方がその方法論を詳細かつ明確に認識できるものではないだろうか。)

 

こういうことは死ぬまで学び続けるものだろうと思っているのだが、今は「自立とは、相対評価による幸福感から離れて、絶対的な自己評価で決められるようになった度合いである」と考えている。自分で生活費を稼いでいるから自立しているという話ではない。例えば、ここまで読んで「で、あなたはどんな成功者なんですか?」というような考えが浮かんだ人は、精神的自由を獲得していない。他人との比較で成功や幸福を識別していて、それは他者に評価を依存しているからだ。しかし、それが普通というか自然の摂理というか、意識して考えていないとそうなるものだ。そうではないなら、自然の摂理から脱しているので精神的自由の段階が進んでいるということになる。

 

精神的自由の段階が進んでいるとは、絶対的な自己評価で幸福や成功を決められていることが基礎になる。褒められるからとか承認されるからとか応援されるからとかではなく、自分がやりたいからやっている。人に対しても、成功しているからとか能力が高いからとか、逆に貧乏だからとかかわいそうだからとかではなく、この短い人生でたまたま出逢ったので関心を寄せ良い時間を過ごそうと思う。自分が重要だと思ってることに時間を注ぎ、コントローラブルでないことにエネルギーを向けない。目標や結果がこうでなければいけないと執着しない。こうでなければいけないと定めているということは、自身が実際に歩んでいるルートとは別のもう一つの道標となるルートを作っていることになる。もう一つ別のルートがあってそれを歩もうとしているなら他人の人生を歩んでいることと変わらない。人の性格にゼロイチがないように、精神的自由も度合いだなあとは思っている。

 

レシピは収束していて、だいたい3つになるのではないだろうか。

  1. 自分を好きでいること
  2. 人に愛されるよりも人を愛すること
  3. 人生を能動的に謳歌すること

 

ひとつ注意があるが、自立は、自己中心性が強い個人主義とイコールではない。順番として、まず個人の成功が必要だと考えているということが、その正確な解釈となる。たいていはその次に、確立した個性を活かして集団へ貢献していくことを説いているものだ。共感とか親和とかの喜びはこの段階で出てくる。

 

以上のような話の元であり、これまで強い影響を受けた本を紹介する。もっとなぜそうなのかとかどうすれば獲得できるかとかを知りたいならお薦めする。初読するのは10代が理想だと思うが、正直言って私が10代の時に読んでいてもどこまで理解できたか疑問である。何歳かというよりこういったことに関心が芽生えた後に読むのが一番だろう。人間の知覚構造は、問題意識が無ければ、対象を認識できない。存在に気がつきさえすれば、いくつになってからでも学べる。死ぬ前日までが有効期限だという話を支持する。

 

嫌われる勇気

嫌われる勇気

 

今回挙げる中では一番新しい本だが、一番基礎だと思っている。自分を愛して自信を持つ重要性とそれを行うための考え方が丁寧に展開されている。フロイトユングと並ぶ心理学の3大巨頭であるアドラーの解説が中心となる。私が10代の時は似たような対談形式の河合隼雄と村上春樹のユング系の本を読んでてそれも学びがあるんですが、自立についてはこれが直球である。

 

 ニーチェは正直難しい。生涯考え続けたのだから、どの時期のどの話を切り取ったかによっても当然話が変わる。注目すべきものは「積極的な虚無主義」だ。他人の人生を生きずに自分の人生を生きるべき最も重要な理屈になった。どうせ死んだらみんな一緒。何も残らないんだから、それなら目一杯好きに生きようぜということ。本よりこういうブログの方でいいかも。

 

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

 

自分の人生を生きる決意をしても、ではその自分の人生とは何なのか?いったい自分は何者なのか?を知ることは難しい。本書はその問いに対してとても良い道標になる。答えは示さずに、アプローチする方法を穏やかに教えてくれる。

 

思考の整理学 (ちくま文庫)

思考の整理学 (ちくま文庫)

 

 答えを覚えて与えられた問題を解くことから、問題を発見し答えを作る習慣に踏み出すための指南書である。精神的自由をもち自立すると、ひとつ困ることがあって、舗装された道が無くなる。暗闇を手探りで進むのはさすがに文明を逆行するようなものだがそんなことをする必要もなく、本書のような灯りがある。

 

 

最後に、ちょうど良い言葉がYouTubeに出てたので引用する。

 

「ずっと囚われているだけの人生はダメでしょ。人間は自由じゃないとダメなんだ。自由を求めていかないと、腐っていく。」

 

https://youtu.be/_x7CNccZ368?t=388

 6:28からです。このURLはその秒数への直リンクになっています。