コンフォートゾーンから外れることと心理的安全性を高めることは融合する

去年の流行語大賞は『コンフォートゾーン』だった

もちろん、個人的な話で、世代的に通じる人ならみうらじゅんのマイブームってやつだが、そうだった。言葉自体は前から知っていたが、急速に意識するようになったのは去年だった。

 

コンフォートゾーンとは「居心地のいい場所」と訳されるが、使われ方としてはコンフォートゾーンから抜け出せというものが多い。未知の分野に飛び込め!慣れ親しんだ環境をリセットすることが飛躍的な成長の秘訣だ!みたいな。どうもこれに違和感があって、非連続の成長って言葉の響きはかっこいいけど、これまで培ったスキルや人間関係や地位を投げ捨てて1から出直すって、実際やると惨めなものじゃないかという感想がある。(自分は何度かそういうキャリアチェンジを行なっている)

 

 

心理的安全性がチームの生産力を高める

これは少し昔の話になるが、目から鱗の話だった。去年も盛んに取り上げられていて何度も目にしたが、初出は3年前のようだ。

 

gendai.ismedia.jp

 

要約すると、チームの生産性にもっとも寄与していたのは、行動規範でも特定のスター人材の存在でもなければ、メンバーの性格や趣味や価値観の一致でもなかった。「こんなことを言ったらチームメイトから馬鹿にされないだろうか」、あるいは「リーダーから叱られないだろうか」といった不安をチームのメンバーから払拭する、心理的安全性が高い状態にあるかということだった。

 

この心理的安全性が、居心地のいい場所、つまり「コンフォートゾーン」を形成し、メンバー一人一人が自己の能力を自発的に発揮し高い満足度でチームの目標達成に一体となったチームワークを生み出すという。

 

ああ、やっぱりそうなんだなという感想になった。コンフォートゾーンを飛び出すというのは、成果主義型の業績管理制度と親和性高い考え方だが、ストレスフルな環境を生み出し同僚がライバルの状態を作り出しても上手くいかないよな、と。

2018年4月7日

全くの偶然だろうが、この日にコンフォートゾーンをテーマにした二つの記事とスライドが連続で出て、その一つ一つに大きなインパクトを受けた。

 

hb.matsumoto-r.jp

 

一つ目はこちらで、プログラミングのスキル向上に対する飽くなき向上心に圧倒されたが、特に「全能感」に対する向き合い方に深い感銘を受けた。全能感はプログラミングしていると比較的に容易に得られるものだが、コンフォートゾーンから外れた状態において、如何に自身と向き合い対処するかの姿勢を学ぶことは少なかった。おそらく自分がコンフォートゾーンから外れるということに対して忌避感を抱くのは、この内面のプロセスを持たずに成果だけにフォーカスして、じゃじゃ馬を乗りこなすかのように無理やり抑えつけようとしていたからだろうなと思った。

 

 

www.slideshare.net

 

もう一つはこちらで、実際に公開されたのは次の日だったかもしれない。もしかしたら、google社内で研修プログラム化されてる部分も多いのかもしれないが、自チームの経験話だし個人考えも多分に含まれてるだろうなと思う。

 

ワナビー(こうなりたい)を掲げることを推奨していて、如何にも意識高い系の話と受け取る人もいるかもしれない。しかし、内面プロセスを詳細化していて、ステップバイステップで上がっていく方法論に落とし込まれているので、インターネットでミーム的に使われるワナビーとはものが違う。特にチームの心理的安全性を高めることとコンフォートゾーンを外れてハイチャレンジングな目標を目指すことの両者が上手く融合している。

 

両者とも、外側から無理やり抑えつけ乗りこなそうとするのではなく、内面プロセスを詳細化して取り組みやすい粒度に落とし込んでいる。これまで、心理的安全性を高めることと、コンフォートゾーンから抜け出すことを、二項対立のように考えていた節があったが、連続した流れで捉えることができた。そうなると、コンフォートゾーンから抜け出すということへの恐怖感が和らぐというものだ。コンフォートゾーンから脱却することの重要性は十二分にわかっているので。

 

ラーニングゾーン

なお、コンフォートゾーンから抜け出すことについては、フレームワーク化されていた。これは今日記事を書いていて知ったことだが、ラーニングゾーンというのがちょうど良いらしい。これはkinu氏のスライドの目標設定プロセスで、ゴール像から考えるトップダウンでありつつ、「自分の今できること+ゴール達成のために必要であるがこれから成長しないといけないこと」の掛け合わせで考えることと同じ考え方だろう。自分の今できることを上手く内包していればラーニングゾーンとなり、自分の今できることを全く無視したゴール設定で飛び出してしまうとパニックゾーンになるということだ。

 

コンフォートゾーン/ラーニングゾーン/パニックゾーンの説明については、この記事が参考になった。

 

コンフォートゾーンとは、そこから抜け出して成長する方法とは? | GLOBIS 知見録